ツナが缶から飛び出して

旅人ワーカーである私が、日々考えること、旅記事なんかをとりあえずさまざまに書いてみます。

和辻哲郎『巨椋池の蓮』と自己嫌悪

和辻哲郎随筆集』の中に「巨椋池の蓮」というものがあります。文字通り、巨椋池に咲く蓮を見て感動したという話です。

静かな船頭が、少しの音を立てて水をかき、蓮華の花を押し切る。鷭が目を覚ました音をかすかに耳にしながら、遠くまで広がる蓮華の情景と、流れるように種類が変わっていく景色の美しさにうっとりする。そして白んでゆく空と夢から現実へ引き戻される瞬間。

全てを体験できたと思いました。こんな追体験は久々。私の頭の中にある蓮は、もしかしたら現実のものとは少し形や大きさが違うかもしれない。しかし、そんなことはどうでもいいのです。ネットで調べるなど愚行はしません。私は和辻と同じような感動を味わったんです。

 

しかし、文章の最後のところに、現状はどうなっているかわからないので、行くなら問い合わせるがいいとあったので、どうしても気になって調べたら僅か一秒で答えがわかってしまいました。

和辻の願望とは真逆でした。この感動を一瞬で現代に連れてきてしまった自分に嫌気がさしたという話です。